陰謀のための結婚

 場所は城崎リゾート東京ベイ、日本料理店夕月(ゆうづき)
 店に一歩入るだけで、目の前に日本庭園が広がった。玉砂利が敷かれた中央に白い飛び石。脇には小さな池まである。

 案内する仲居の後をついて、ゆっくりと歩を進め、立ち止まった個室の前で深呼吸をする。

「お連れ様がいらっしゃいました」

 開かれた部屋の中には、すでに男性がひとり。私が入室すると、立ち上がって出迎えた。

「きみが香澄さん? これは随分と美しい人だ」

 褒められても嬉しく思えなかった。

 立ち上がった城崎は背が高く、彼の方こそ美しかった。男性を美しいと形容したくなるのは初めてだ。

 スッと通った鼻筋、開かれた双眼は長いまつ毛に縁取られた深い二重。形のいい唇は品良く口角が上がっている。少し骨張った頬と意志の強そうな眉が、美しい顔立ちを男らしくさせていた。

 見惚れていたと気づき、我に返る。

「香澄です」

 名前だけ告げて会釈する。用意してきた挨拶など、吹き飛んでしまった。
< 11 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop