陰謀のための結婚
場所は城崎リゾート東京ベイ、日本料理店夕月。
店に一歩入るだけで、目の前に日本庭園が広がった。玉砂利が敷かれた中央に白い飛び石。脇には小さな池まである。
案内する仲居の後をついて、ゆっくりと歩を進め、立ち止まった個室の前で深呼吸をする。
「お連れ様がいらっしゃいました」
開かれた部屋の中には、すでに男性がひとり。私が入室すると、立ち上がって出迎えた。
「きみが香澄さん? これは随分と美しい人だ」
褒められても嬉しく思えなかった。
立ち上がった城崎は背が高く、彼の方こそ美しかった。男性を美しいと形容したくなるのは初めてだ。
スッと通った鼻筋、開かれた双眼は長いまつ毛に縁取られた深い二重。形のいい唇は品良く口角が上がっている。少し骨張った頬と意志の強そうな眉が、美しい顔立ちを男らしくさせていた。
見惚れていたと気づき、我に返る。
「香澄です」
名前だけ告げて会釈する。用意してきた挨拶など、吹き飛んでしまった。