陰謀のための結婚

 その途中、道を挟んで向かいにある、オープンカフェが目に止まった。楽しげに誰かと話している女性は母だった。

 今日は奥住さんと会うと言っていた。たまたま選んだ西麻布のカフェ。そのすぐ近くで母を見かけるだなんて、こんな偶然あるんだと驚く。

 そして母が一緒にいる人物の性別を知り、どこか安堵する。

 もしかしたら奥住さんは男性で、冗談でもなんでもなく母は近々再婚するのではないかと頭の片隅で考えていた。けれど、母と話している人は女性だ。

 心のどこかで母には、まだ再婚してほしくないと思っているのかもしれない。いい加減親離れしなくてはと、もう一度母に視線を向け、ある事実に気づく。

 奥住さんは、顔合わせで現れた三矢の妻だった。

 智史さんと繋いでいる手に力が入る。

「どうした?」

 優しい声で話しかける彼が私を見つめる。

「なんでも、ありません」

 早くこの場を立ち去らなければ。そう思えば思うほど、脚がもつれて彼に支えられた。

「大丈夫?」

 寄り添う彼になにも言えないまま、足早に駅へと向かった。
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