陰謀のための結婚
マンションにつき、玄関に入ると後ろから覆い被さられた。
心臓が音を立てるものの、彼は体重をかけるだけ。
「智史さん? 私を押し潰すつもりですか?」
「いや、愛おしいなあって」
体を離し、私の頭をかき回したあと、「待っていて」と部屋の奥へと歩き出す。
いつもなら彼の色気に流されるところなのに、今日はどこか雰囲気が違う。
彼の違いを感じつつも、私はさきほど知った事実に気を取られていた。
母と会っていた人物。どう見ても親しげな間柄だった。
ノートパソコンを置きに行った彼が戻ってきて、私の異変に気づく。
「どうした? 青白い顔してる」
「大丈夫です」
『大丈夫』という声が情けなく掠れて消える。
よりによって今日、奥住さんの正体を知るなんて。
全てを彼に話そうと決めたせいか、朝から腹痛があった。緊張しているのだと思う。それに加え、さきほどの母の楽しそうな表情が頭から離れない。