陰謀のための結婚
「今日は暑かったから。少し涼んでから行こう」
智史さんは私の背中に手を添え、中へと促す。
「すみません」
たしかに体調はよくない。気持ち的にも落ち着いてから出かけたい。
言葉に甘え、玄関を上がる。違和感があり、動きを止めた。
脚を伝い、床に落ちる鮮血。みるみる青ざめて立ち尽くす私に、智史さんも気がついて優しく言った。
「そっか。生理。気にしないで。拭いておくから、お手洗いに行っておいで」
しかし、彼が当たり前に話す内容を受け入れられなかった。
「私、生理が来る体じゃないんです。ごめんなさい。妊娠なんてできないんです」
彼の表情が固まるのがわかる。
「ごめんなさい。全て話そうと思っていたのに」
目の前が白くなり、力が抜ける。
「香澄ちゃん? 香澄!」
彼は私の名を呼び、倒れそうになる私を支えた。