陰謀のための結婚

「どうしたの? 香澄。昨日帰ってきてから、元気がないみたい」

 母に指摘され、慌てて意識を取り戻す。

「少し仕事でトラブルがあって」

 母は眉を寄せ、心配顔を向ける。

「お母さんは手術なんてしなくていいのよ。無理しないで」

 辛そうに顔を歪め、母は窓の外に目を向ける。それは母が泣きそうになるとする仕草だ。

 私はそんな母の横顔を見つめながら、歳を取ってもやはり綺麗だと改めて思った。

 苦労してきたために疲れは色濃く出ていても、隠し切れない美しい顔立ち。

 それは自分にも受け継がれていた。けれど母は口癖のように『目立ってはダメ。地味に堅実に生きるのが一番よ』と繰り返した。
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