陰謀のための結婚

 城崎社長は頬を緩め、朗らかに告げる。

「香澄さんに、香澄さんは望まれて生を受けたと話してあげていたところだ」

 考えないようにしていた。考えてしまうと、城崎社長が口にしたのとは、逆の発想になってしまうから。

 私は目を強く閉じ、『自分は望まれなかった子どもなんです』と叫んでしまいそうになる心を固く閉ざす。

 目を閉じた暗闇の中で、三矢の掠れた声を聞いた。

「それは、もちろん、歓喜しました」

 言わされている感が満載で、苦々しい気持ちが広がっていく。

 城崎社長は尚も続けた。

「だから、香澄さん自身にも同じ喜びを味わってほしくて、智史と会わせてみようと決心した」

「それは」

 同じ喜びとはなんだろうか。言い淀む三矢がなにを言い出すのか気になって、そっと目を開ける。

 そこには冷酷で決して温かみなどなかった三矢の微かに動揺している表情。
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