陰謀のための結婚

 なにも言い出さない三矢の代わりに、城崎社長が口を開く。

「城崎リゾートの力を持ってすれば、香澄さんに腕のいい医師に手術を頼める。そうすれば将来、自分の子どもを望むことも可能だ」

 城崎社長はやはり全てを知っていた。

 私は信じられない気持ちで話の続きを見守った。

「そう言ったのは城崎社長でしょう。そして智史くんが気入れば、城崎社長もわたしも安泰だと」

「三矢くんは智史が香澄さんを弄んで捨てるかもしれないと心配していたが、ふたりを見れば、それも杞憂だとわかる」

 一斉に私たちに視線が向かい、不安げに智史さんを見上げる。すると智史さんは力強く宣言した。

「必ず香澄さんを幸せにします」

 そして私に向かって「だから結婚しようね」と告げた。

 私はまだ混乱の中にいて、返事をできずにいると城崎社長は笑う。

「なんだ。智史、お前の方が捨てられそうじゃないか」

 智史さんは不服そうに眉を上げ「口説いている最中だから、黙っててくれないか」と抗議した。

 城崎社長はひとしきり笑ったあと「さあ、では我々は引き上げるとしよう」と席を立った。
< 162 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop