陰謀のための結婚

 回されていた腕に力が入り、「俺も」と囁かれた。

「起きていたんですか?」

「寝ぼけてたけど、今ので目が覚めた」

「ご、ごめんなさい」

「いいよ。うれしい言葉が聞けたから」

 回されている腕にますます力が入り、「く、苦しいです」と訴える。

「ごめん。すごく浮かれてる」

 目尻を下げた彼の顔が一瞬視界に映り、そのまま唇が重なった。小鳥がついばむみたいに何度もキスをしてから、おでこを擦り合わせた。

「早く一緒に暮らそう」

「それは、母ともちゃんと話さないと」

 話して、いい方向に進むだろうか。もしかしたら、全ては話せないかもしれない。そうだとしても、智史さんの側にいつまでも居たい。

「うん。お母さんとはよく話し合って。前にも言ったけど、俺はお母さんとも一緒に暮らしたっていいと思ってる」

 ありがたい申し出に胸が温かくなる。

「赤ちゃんは、どうなるかわからないですが、できる限りの努力はしようと思います」

「うん。そっか。うん」

 彼は頷いて頬を撫でて「無理だけはしないで」と気遣う言葉をかけた。

「迷惑をおかけしたり、不安になったりもすると思いますけど、側にいてくださいね」

「もちろん」

 智史さんは改めて私を強く抱きしめた。
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