陰謀のための結婚

「ところで温泉は好き?」

「ええ。はい」

「今回の旅行は、仕事の視察も兼ねているんだ」

「そう、だったんですね。仕事熱心なんですね」

 つい彼が、城崎リゾートの御曹司だという事実を忘れてしまう。

 外見や振る舞いは、どちらかと言えばどこかの王子様だ。だから夢見心地で、現実ではない気がしてしまう。

「まあ、ね。仕事を口実にしたら、同行してくれるかと目論んでいたんだけど、行き先も聞かないでOKを出すから、少し心配になるよ」

 こちらに視線を寄越し、苦言を呈したあと、妖しく言われる。

「それともやっぱり俺に惹かれてるから?」

 そうだと肯定すれば、結婚話は順調に進むかもしれないのに、簡単に頷けない。

「ハハ。返事を急ぎ過ぎてるな。まだ時間はある」
< 39 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop