陰謀のための結婚
「ところで温泉は好き?」
「ええ。はい」
「今回の旅行は、仕事の視察も兼ねているんだ」
「そう、だったんですね。仕事熱心なんですね」
つい彼が、城崎リゾートの御曹司だという事実を忘れてしまう。
外見や振る舞いは、どちらかと言えばどこかの王子様だ。だから夢見心地で、現実ではない気がしてしまう。
「まあ、ね。仕事を口実にしたら、同行してくれるかと目論んでいたんだけど、行き先も聞かないでOKを出すから、少し心配になるよ」
こちらに視線を寄越し、苦言を呈したあと、妖しく言われる。
「それともやっぱり俺に惹かれてるから?」
そうだと肯定すれば、結婚話は順調に進むかもしれないのに、簡単に頷けない。
「ハハ。返事を急ぎ過ぎてるな。まだ時間はある」