陰謀のための結婚

 車はサービスエリアに入り、停車した。降りる準備をしていると、そっと頬に手が触れ肩を揺らす。

「俺、こんなに堪え性がなかったかな。きみを見ていると、つい触れたくなる」

 色気漂う唇が視界に入り、体が熱くなる。

「絶対に男に困らない人生を歩んできただろう?」

 どう返事をしていいのか困って黙っていると、彼は続けた。

「それなのにすごく初心な反応で、もっと見たくなる」

 頬に触れていた手は耳に移動して、肩を縮める。

「人が」

 ここは料理店の個室ではない。車の中とはいえ、すぐ近くに人が歩いている。

「ああ。ダメだな。今日は真摯にというのは、ジェントルマンの紳士もかけていたのに」

 手を引かれ、アッと言う間も無く彼の胸の中に抱かれた。そしてあろうことか、彼は耳に軽く噛み付いた。

「ん」

 とんでもない声が出て、総毛立った気がした。彼の体もピクリと動いたから、聞こえたに違いない。

「俺にここで襲わせるつもり?」

 困惑気味に言われても、私のせいじゃない。
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