陰謀のための結婚
彼は私を胸に抱いたまま、自身の頭をかき回した。
「あー。悪い。冷静になりたいから運転していい? 別のサービスエリアに寄るから、休憩はあとにさせて」
「はい。私は、大丈夫です」
勢いよく体を離した彼は、その流れでシートベルトを閉めた。
「香澄ちゃんもシートベルトして。動くよ」
慌ててシートベルトを確認して、しっかりと締めた。改めてシートベルトと言われると、猛スピードで走るのかと思い、胸の前にあるベルトを思わず掴む。
お陰で耳を齧られた恥ずかしさは、有耶無耶になった。
車は滑らかに動き出し、サービスエリアを出て高速本線に合流する。
心配したスピードは、先ほどと変わらない安全運転だ。
「運転、交代できなくて、すみません」
高速に乗ってから、随分走っている。次のサービスエリアで、と言ったのだから、目的地はまだ先になるのだろう。
「いいよ。運転好きなんだ。無心になれるというか。香澄ちゃんは、免許ないんだっけ?」
「はい。必要に迫られなかったので、そのまま」
都心とまではいかなくても、東京近郊に住んでいれば、どうにか電車とバスで過ごせてしまう。