陰謀のための結婚
「いや、こんな話、社員でも知っている人間は少数だ。読みは違うが、同じ"城"と"崎"という字で、城崎。縁を感じずにはいられなくて」
地名から名字を取ったのだろうか。もともと名家だったのだろうなと推測して、住む世界の違いをありありと感じた。
彼は彼で、地名に思いを寄せて肩を掠めている。
「城崎という場所にこだわっているのも俺ぐらいだから、なかなか賛同者を得られなくてね」
「だから視察に?」
「そう。会社が許してくれるわけでもないから、プライベートの視察。自分のルーツを知りたいと思う欲求は、人として自然なんじゃないかな」
『自分のルーツを知りたい』
私はその部分に、ずっと目を背けて生きてきた。
朗らかに告げる智史さんがまぶしくて、彼をまともに見られなかった。