陰謀のための結婚

「いや、こんな話、社員でも知っている人間は少数だ。読みは違うが、同じ"城"と"崎"という字で、城崎。縁を感じずにはいられなくて」

 地名から名字を取ったのだろうか。もともと名家だったのだろうなと推測して、住む世界の違いをありありと感じた。

 彼は彼で、地名に思いを寄せて肩を掠めている。

「城崎という場所にこだわっているのも俺ぐらいだから、なかなか賛同者を得られなくてね」

「だから視察に?」

「そう。会社が許してくれるわけでもないから、プライベートの視察。自分のルーツを知りたいと思う欲求は、人として自然なんじゃないかな」

『自分のルーツを知りたい』

 私はその部分に、ずっと目を背けて生きてきた。

 朗らかに告げる智史さんがまぶしくて、彼をまともに見られなかった。
< 43 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop