陰謀のための結婚
楓の間に通され、部屋の中をひと目見てドキリとする。部屋に通されたために、彼と泊まるという事実が突然現実味を帯びた気がした。
部屋は和室で座卓の奥に開かれた障子があり、ここからも美しい庭園が見える。
仲居さんが出ていくと余計に緊張感が高まって、顔が上げられない。
「いいところだね」
柔らかな声を聞き、やっと顔を上げる。
「はい。とても」
「ここの温泉街は七つの外湯が有名だから、明日は外湯めぐりをしよう」
「楽しそうですね」
「ああ。さあ、今日はもう遅い。旅館の風呂に入ろう」
促され客室から大浴場に向かう。
「じゃまたあとでね」
男湯と女湯。それぞれの暖簾をくぐった。