陰謀のための結婚
広々としたお風呂は檜のいい香りがして、癒される。湯に入るとゆるゆると体はほぐれていくけれど、やはりすべての緊張が解けるわけではなかった。
男性と泊まりの旅行。なにもないとは思っていない。そんなつもりじゃなかったと言うつもりもない。
ひとたび、彼の色気に囚われれば、きっとなにも考えられなくなる。押し流されてしまえばいい。
母の手術のために、お金のために彼に結婚相手として選ばれるよう頑張ろう。そう思えたら、楽だったかもしれない。
どうしてあんなに素敵なのだろう。一緒に過ごせば過ごすほど、彼を騙している罪悪感と比例して、このままなにも言わずに彼の側にいたいという想いが膨れていく。
母のためと言い訳をして、本当は自分が彼に会いたかった。あの日、キスを許したわけが今は痛いほどわかる。一瞬で彼に落ちて、そして側にいればいるほど、彼に惹かれていた。