陰謀のための結婚

 彼は嬉しそうとも、悲しそうとも取れる複雑な表情をして言った。

「いい旅館だ。古き良き日本を体感できる。街並みもそうだ。ここに城崎リゾートのホテルが建つ姿は想像できなかった」

 思わず彼の手に自分の手を重ねる。

 その手を引かれ、彼に抱き締められた。

「ほかの新設予定のホテルのプレゼン資料を作っていても、いつか城崎温泉にと、想像していた。けれど肌で感じてわかった。一朝一夕で作られるものじゃない」

 彼の腕の中で聞き、彼の無念さが痛いほど伝わってくる。

「城崎リゾートのホテルは、城崎リゾートならではの良さがありますよね」

「ああ、そうだね。香澄ちゃんと来られてよかった」

 柔らかな声を聞き、私は首を横に振る。

「私は、なにも」
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