陰謀のための結婚

 次に目が覚めると、智史さんがすぐ近くで見つめていた。

「おはよ」

「おはようございます」

「外湯めぐりいけなかったね。ごめん」

「いえ」

 目を伏せる彼のまつ毛まで数えられそうだ。本当に美しい。光に当たってキラキラしている。

「ねえ。結婚しようよ」

 まるで朝ごはんを食べようと言うのと同じトーンで言われ、意味を理解するまでに時間がかかった。

 伏せられていた瞳は、真っ直ぐに私を捕らえた。

「一緒に暮らさないか。俺は、きみのお母さんと一緒でも構わないよ」

「えっ、知って」

 思わず声が出て、口を手で覆う。けれどそれも全て無駄だった。

「三矢社長の息子とは、子どもの頃からの知り合いなんだ。あいつの家に女の子はいなかった」

 背けた顔に手が添えられ、視線を逸らすのさえ許されない。
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