陰謀のための結婚
「尋問って、大丈夫?」
四人掛けのソファ席で、智史さんは私の隣に座る。玲奈が食べ終えた食器があるから、仕方がないけれど、近い距離になんだか落ち着かない。
「冗談で言っているので平気です。すみません。突然、呼び出すような真似」
玲奈の場合、冗談ではなさそうだけれど、とりあえずそう言っておく。
「食事に誘うつもりだったからいいよ。玲奈ちゃん? 面白い子だね」
智史さんは頬を緩めている。
「それに、家の近くの飲食店は西麻布じゃなく、大森だって知れたし」
前回待ち合わせしたカフェよりも、ここはずっと庶民的なお店だ。
「ここ、おいしいんですよ」
大森の中でもボロアパートに住んでいると知ったら、彼はどういう顔をするだろう。
「うん。なにか食べようかな。香澄ちゃんは食べたの?」
「はい。半分くらいは」
残りを指差して、肩を竦める。
「玲奈ったら、智史さんを呼んだ時点で先に帰るつもりだったのね」
ぼやいていると、彼の指が頬をなぞる。
「俺は、きみの別の顔が見れてうれしいよ」
「え」
触れた指に誘われて彼と視線が絡む。引き寄せられるように、顔が近づきそうになって慌てて顔を背けた。
私、今、なにしようとしたの? ここイタリア料理店よ。