陰謀のための結婚

 歩き慣れたアパートまでの道を歩き、玄関のドアを開ける。中から母の声が聞こえた。

「おかえり。遅かったのね」

「うん。後輩とご飯を食べてて」

 嘘ではない。全部を話していないだけ。

 小さな隠し事が、どんどん積み重なっていく。

「疲れたから、お風呂入るね」

「はーい。沸かしてあるわ」

 コルセットの調子がいいのだろう。母は陽気な母を取り戻してきている。

 私は……。

 鞄からスマホを取り出してメールを送る。

《無事に帰りました。心配無用です》

 スマホはすぐに返事を受信する。

《安心したよ。おやすみ》

《おやすみなさい》

 メールの文字を指でなぞる。胸に切なさが広がって、スマホを胸に抱いた。
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