陰謀のための結婚

 神楽坂にある料亭福田屋。早めの時間に到着し、用意された振り袖に着替えた。週末のデートが両家の顔合わせだとは、考えもしなかった。

 週の中頃。三矢から一方的に連絡があり、昼一時からの顔合わせを知らされた。

 智史さんからは、あれから一度も連絡がないまま。

 振り袖は上品な古典柄が華やかで、下地の黒や白、紺色といった落ち着いた色地に映える。けれどどんなに素敵な着物でも、心は踊らない。

 両家の顔合わせはしないまま、フェードアウトするつもりだった。こんなにも早く話が進むとは思っていなかった。
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