陰謀のための結婚
両家が一堂に介し、ひと通りの挨拶を済ませる。
智史さんの両親は、おおらかで優しそうな雰囲気の方だった。
「これはこれは美しい女性だ。結婚に興味がなかった智史の心を奪っただけはある」
「父さん。余計な話はいいんだよ」
智史さんは迷惑そうな顔をしているが、両親との良好な関係が見て取れた。
私は、遠い世界の映像でも見ている気分だった。
智史さんも正装していて、私の知っている彼とは違って見えた。こちらの彼の方が、現実の彼だ。わかっていたつもりなのに、自分との違いに胸が痛い。
「ふたりが結婚となれば、我々も安泰だな。なあ、三矢くん」
「もちろんですとも。今後もよろしくお願いします」
親しげに話す三矢の会話を、苦々しい気持ちで聞いた。
「さて、あとは若い者に任せようか」
お決まりの流れになり、智史さんがそれを受け取った。
「では、庭を見てから、香澄さんをご自宅までお送りします」
丁寧に挨拶をして、彼は私を料亭の中にある日本庭園に連れ出した。