陰謀のための結婚

 南青山でタクシーを降り、お洒落な高層マンションに入る。

 玄関に入ると素早く抱き寄せられ、靴も脱がずに唇を重ねる。彼の首に手を回し、崩れ落ちそうになる体を彼の腕が支え、より体を密着させた。

 貪るようにキスをして、彼の体に脚を絡ませ妖しく誘う。

「早く、お願い」

 なにも考えられなくなればいい。

 家柄も、虚しさも、自分の立場や、惨めな思いも、全部全部。

 ネクタイに手を掛け煩わしそうに緩め、シャツのボタンも外していく。余裕のない彼の仕草が欲情を駆り立てる。

「寝室に行こう」

「いいの、ここで」

 粗末に扱われたかった。乱暴にしてほしかった。自分の心なんて、粉々になってしまえばいい。

「ダメだ。ここじゃ存分に抱けない」

 欲望を隠さない瞳で、彼は私を抱き上げて廊下を進む。脱がなかったヒールが、音を立てて下に落ちても、彼は気にも留めずに歩き続けた。そして、ベッドの上に私を下ろした。

 覆い被さった彼の眼差しが一瞬だけ見えて、ゾクリと背筋が反応する。普段の優しくて穏やかな彼とは違う、飢えた獣のような鋭い眼差し。

 そこからどれだけ声を上げ、身悶えようとも、彼は私を離さなかった。
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