甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
 タクシーのドアが閉まってから、ふーっと息をつく。
 15分ほど同じ姿勢でいたから腕が痺れている。

 わたしは無意識に、まだ彼の温もりの記憶が残っている右腕にそっと触れていた。

 嫌じゃなかった、ぜんぜん。
 それどころか、もう少し、あのままでもいいとさえ思っていた。

 一緒の部署になって、島内さんと毎日過ごすようになって数週間。
 彼の嫌なところがまったく思いつかない。
 それどころか、感心することや素敵だと思うことばかりで。

 それってやっぱり……好きになったってことなのか。

 でも、そう告げたいという気持ちより、まだ不安がまさっていた。

 なにしろ素敵すぎるのだ、島内さん。

 だから、よけい心配になる。

 彼をわたしだけのものにできるはずなんてない、と。
< 119 / 164 >

この作品をシェア

pagetop