甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
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でも、オフィスに島内さんの姿はなかった。
残っていたのは多田さんだけ。
「あれ、植田さん。忘れ物?」
「あ、はい。あの、多田さんおひとりですか?」
「ああ、さっき、島内は橋本さんと出て行ったよ」
「買い物か何かですか?」
「さあ」
多田さんは首をかしげて、両手を天に向けた。
ついてない日というのは、どこまでもついていないらしい。
わたしはデスクの引き出しから、まったく必要のない手帳を取りだし、バッグにしまった。
「じゃあ、お先に失礼します」
わたしがドアに行きかけると、多田さんが「植田さん」と声をかけてきた。
「はい?」
振りむくと、彼は椅子から立ちあがり、こっちに歩いてきた。
彼は意味深に声をひそめた。
「島内はやっぱり橋本さんとできてるみたい」
「えっ?」
「いや、さっき橋本さんが『週末、うちに来て』とかなんとか言ってたから」