甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
「そろそろ出る?」
 わたしが頷くと、島内さんはウェイターを呼んだ。

 椅子から立ち上がると、自分が思っていた以上に酔っていた。
 店を出て「ごちそうさまでした」と頭を下げたとき、頭がくらっとして、よろめいた。
「大丈夫?」
「すみません。ちょっとめまいがして……」
「ほら、つかまって」

 彼はわたしを支えながら、ゆっくりエレベーターホールに向かった。

 エレベーターに乗ったのはわたしたちだけだった。

 閉ボタンを押した直後、彼はわたしの左手を取り、少し持ち上げた。

「ここ、擦りむいてるよ。道で転んだときだな」
そう言って、上目遣いでわたしを見ながら、彼は囁いた。
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