甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
 彼は手の甲で乱暴に自分の唇を拭うと、扉に手を添えて、わたしに先に降りるように促した。

 フロントの前に置かれたソファーに座り、チェックインする彼の背中を眺めていた。

 戻ってきた彼は「ちょっと待ってて」と言って、ロビー内のコンビニに向かっていった。

 帰るなら、今しかない。
 でも、わたしは立ち上がらなかった。

 立つのが億劫なほど酔ってはいた。
 
 でも……
 
 お酒に酔っていたから。
 寂しかったから。
 ひとりになりたくなかったから。

 そんなのはすべて言い訳だとわかっていた。

 さっきの、強引だけど蕩けるように甘いキスの続きが欲しかった。

 だから……彼に抱かれた。
 宣言どおり、本当に頭の中が真っ白になるまで。

 いつ眠りについたか、わからない。
 ひと月ぶりに、夢も見ず、泥のように眠った。
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