黒曜の戦場


クククッと下衆な笑い声を残してキッチンへと入って行ってしまわれたいおりさんに残された私たちは作業も出来ず気まずい空間が生まれてしまっていた。



「あ、の……おててありがとうございます」

「キモ」

「相変わらず冷たい」



けれど、手はあたたかい。

私が新参者だから当たりがキツいだけなのかもしれないけれど、でも心配(?)してあっためてくれたのは優しいと思う。



「……お前さ」

「はい?」

「俺のことはリンでいいから」



ぽつり、静かに呟かれた言葉を、頭の中で処理すること数秒。



あ、名前のこと……?と思って振り返ろうとした後頭部を掴まれて固定された。

なんてこったい。



「動くな」

「そうでした」



首は安静にしていないといけない。

くそう、その顔見てみたかったぜっ。



「咲のこと『くん』付けにしといて俺らのことは『さん』付けとかおかしいだろ」

「あー……たしかに?」



咲くんに対しては馴れ馴れしく行っちゃってるからなぁ。

いや、だって、すごい好青年ぽいところが『くん』の方が似合うんだもの。

咲くんは咲くんだよ、うん。

未夜くんも未夜くんだし。

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