見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
戸惑っているうちに、早紀子さんはさらに強い力で私の服と腕を掴む。今や、私を半ば揺さぶるほどに彼女は興奮していた。その状態で詰め寄るものだから、言葉ももはや叫ぶような金切り声になりつつあった。
「そんな話聞きたくないわ! 私が聞きたいのは別れるっていう約束だけよ。さあ早く言って、稔幸さんを愛してないから別れますって」
興奮で顔を紅潮させ、そして涙で目を真っ赤にしながら私を揺さぶるという、誰が見ても尋常ではない様子に違いないのだけど、だからこそか誰も声を掛けたり割って入ってきたりはせず、遠巻きにしている。
誰かひとりでも騒いでくれればいいのに、とぼんやり思う私の頭は、揺さぶられ続けてさらにくらくらとしてきた。気のせいか、少し吐き気まで感じる。
こうなったら体当たりしてでも振り切るしかない、と考えつつも、なんだか身体に力が入らない。早紀子さんの手首を掴んでいたはずの私の手は、いつの間にかだらりと垂れ下がっていた。
いくら待っても望む答えを口にしない私に、ついに業を煮やしたらしい。
「この性悪女!」
そう叫んで早紀子さんは、私を身体ごと、後ろにあった柱にぶつけた。力いっぱい。
──がつっ、と頭が硬いものにまともに当たる音がした。
同時に、身体の背面全体が、同じように柱に打ちつけられる。