見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!

 入ってきたのは女性の医師だった。眼鏡をかけた、理知的な風貌の相手は、少し低めの声で穏やかに説明をしてくる。

「念のため脳波の検査をさせていただきましたが、異常は見当たりません。骨折や捻挫もないようです……それと、妊娠しておられますね」
「…………え?」

 説明の最後の部分が瞬時に理解できなくて、問い返す。

「にん、しん?」

 その声がちょっと間抜けだったと、後で思い返して感じた。女性医師はにこりと微笑んでうなずく。

「ええ。胎嚢の大きさからしておそらく、七・八週目あたりだと思われます。心音も聞こえましたよ」
「心音……」

 起き上がっていたらきっと、私はお腹を見下ろしていただろう。でも今はできないから代わりに、布団の下でお腹にそっと触れる。

 いつもと変わらない形の腹部から、伝わるものは何もない。
 ──けれどこの内側には、自分とは別の命があるのだ。

 そう考えると、自分の身体すらも今は、これまでとは違う存在に感じられてくる。もう私ひとりの身体じゃない、なんて言い方があるけど、本当にその通りだと思う。
 今の私は、私だけのものではない。この子が──私と稔くんの子供が育つための器でもある。

 かなり強く打ちつけられたと思ったけれど、女の力だったのと、打ったのは主に上半身だったから影響がなかったのだろう。もし、階段から落ちたりして腰から下も……だったら、どうなっていたか。
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