見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
有名チェーンホテルのロビーは広く、日曜でもビジネスマンや観光客だろうか、人の出入りがコンスタントに見られる。
絨毯の床を踏みしめながら歩みを進めていくと、私の両側を固める父母が、ぴたりと足を止めた。
何だろうと、二人の顔と周囲を窺うと、すぐ近くの応接セットに腰かけていた人々が立ち上がった。こちらを見て軽く頭を下げてくる。
見合いの相手家族だ、と察した時には、応接セットの横で両家向かい合っていた。
「もうご到着でしたか。遅れまして申し訳ありません」
「いえ、我々が早く着きすぎただけですから。こちらこそ失礼いたしました」
互いの父親がそう言い合って頭を深く下げ合い、母親同士は「おはようございます」「本日はどうも」と言いながらやはりお辞儀し合っている。
取り残されたようになっている私と、お見合い相手の男性。その当人の顔をやっと見た私は、目をむいてしまった。
「……あ、あなた」
「どうも。先週ぶりですね」
つい先週、職場で応対したフェアルート商事の坂根部長さん。彼がにっこり微笑んでこちらを見下ろしていた。