見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
貸し個室のひとつに移動した後、あらためて互いに挨拶を交わす。
「本日はご足労ありがとうございました。坂根勝平と申します。あちらは妻の緑、これが息子の稔幸です」
「ご丁寧なご挨拶、痛み入ります。相崎博高です。家内の容子と、娘の明花でございます」
向かいに座る坂根さんと目が合い、また微笑まれる。反射的にドキッとしてしまった胸をなだめ、ふたたびお辞儀をした。
「相崎さんは飲食店を経営なさってるそうで」
「いやいや、町の定食屋に毛が生えたようなものですよ。坂根さんの会社に比べれば、ささやかなものです」
祖父母が創業したのは確かに定食屋だったけど、父の代になってから品数と店舗を増やして、今では中規模ながらもファミレスチェーンを展開している。父が現役社長なので、人によっては私を社長令嬢と呼ぶかもしれない。けれど私自身はそんな実感は薄かった。
「いや、うちこそまだまだですよ。これからさらに業績を伸ばすべく頑張っております」
「息子さんは部長になられたばかりだとか。お若いのにご立派ですね」
「七光と言う者もおりますがね。私は身内だからと贔屓する主義ではありません」
「失礼ですが、稔幸さんは、その……」
「ええ、ご存じでしょうが、実の息子ではないのです」