見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
「えっ」
思わず声に出てしまったが、驚いたのは私だけのようだ。父も母も、澄ました顔で前を向いている。
きっと釣書には書かれてあることなのだろう。読んでいないことが今さらながら恥ずかしくなる。
幸い、その場では誰からもそれについて言及されなかった。
「実の父親は、これが赤ん坊の頃に亡くなりましてね。妻が長いこと女手一人で育てておりました。縁あってうちの子会社で働いていた時に知り合いまして。これとも養子縁組をすることになった次第です」
坂根さんの父親は、そんなふうに簡潔に説明してくれた。
途中まで母子家庭だったのか、と考えた時、記憶に引っかかるものを感じた。
あれ、母子家庭……? それに、坂根さんと会った時に感じた、うっすらとした見覚えのようなもの。
もう一度坂根さんに目をやると、さっきとは違った、どこか楽しそうな目つきで私を見ている。
いや、彼だけではない。気づくと向こうのご両親、さらには私の親に至るまでが、こっちの様子を窺うようにじっと見つめていた。
「え、あの、何か……」
私が戸惑った声を出すと、坂根さんがふっと笑った。
「わからへんかなあ、はるちゃん」
唐突に気安く、しかも関西弁で呼ばれたことで、さらに戸惑ったのも束の間。
脳内の記憶にいきなり、スポットライトが当たる。
「……え、あ、ああっ! 稔くん!?」
気づくと椅子を倒す勢いで立ち上がって、そう叫んでいた。