見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!


「はるか、どうしたの?」
「えっ?」

 声をかけられて、私は、遠くにさまよわせていた思考を自分の中に戻してくる。

 ──ここは、ホテルニューコタニの宴会場のひとつ。
 そこで、母校の高校3年時の、同窓会が開かれている。

 うちの高校はクラス数が多かったから、1学年だけでも結構な人数がいた。今日、もちろん全員が参加はしていないだろうけど、それでもゆうに300人は来ていると思う。特に私のいた5組の顔ぶれは、8割方がそろっているのではないかと思う。当時の担任の先生も来ている。

 会が始まってすぐに、同級生の中のふたりがもうじき結婚するという話題が出て、こぞって皆が彼と彼女をお祝いしていた。ただ個人的にはそれほど親しくない相手同士だったので、声をかけるタイミングも理由も逃して、少し離れたところでスパークリングワインを飲んでいた。

 そしてお祝いムードの中に身を置いているせいか、自然と思い出してしまっていたのだ。今夜、出かける前のやり取りを。
 いや、やり取りと言えるほどに何かがあったわけではない。

『じゃあ、行ってくるね』
『気をつけて』

 会話としては、これだけ。

 付け加えるなら、ネイビーブルーのドレスを着て、それに合わせたアクセサリーや靴を身につけ、髪をアップにした私を、稔くんは頭からつま先まで一瞥した。何か言いたげな目をして。
 たかだか同窓会でそんなにめかし込むのか、とでも言われているように思った。自意識過剰だったかもしれないけど。
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