見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!

 彼の視線と表情は気になった。だけど尋ねることのできる空気ではなく、何も言えなかった。
 仕方なく、もう一度『行ってきます』と言って、家を出てきた。

 同窓会は思った以上に盛り上がっていて、当時親しかった友達もけっこう来ていたので、会話する相手には事欠かなかった。
 正直、有難かった。意図的にそうしていないと、どうしても思い返してしまうから──物言いたげな視線と表情を。その裏に隠されているかもしれない意味を。

 つい15分前までは、思い返さずに済んでいた。
 けれど、遅れてやって来た同級生カップルによって場の流れが変わり、話していた友達が皆そちらに集中してしまったために、今は輪から外れた状態になっていた。

 一人でぼんやりしていると、どうしても、考えても仕方のないことに頭がいってしまう。
 彼は今、ひとりで家で、何をしているのだろう。
 何を考えているのだろう……

「相崎さんだよね?」

 唐突に声をかけられて、はっと我に返る。
 振り向くと、スーツ姿の男性が、遠慮がちな微笑みを浮かべて私を見ていた。

 誰だったろうか、としばし考えているうちに、記憶がつながる。

「……あ、澤田くん?」

 尋ね返すと、相手はほっとしたようにうなずいた。

< 64 / 120 >

この作品をシェア

pagetop