見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!

「だから気にしないでって。忙しかったけど楽しかったし」
「いや、本当に……その時のお詫びって言ったら何だけど、会が終わったらここのバーに行かない? 奢るからさ」
「えっ」

 思いがけないことを言われた。当時の委員以外にこれといって接点のなかった澤田くんが、どうして私を誘うのだろうか。それに。

「あの、私、結婚してるんだけど」

 なるべくさりげなく左手を持ち上げながら言うと、澤田くんは「知ってる」と返した。

「どこかの御曹司と見合いしたって、噂で聞いたよ。けど、一杯飲むぐらいはいいだろ?」

 私を見つめる澤田くんの目は、妙に熱っぽい。きっと考えすぎなのだろうけど、告白されているような気さえしてしまう。
 こんなに誘ってくれているんだから、一杯ぐらいはいいかな……いやいや、待て待て私。

 実情がどうあれ、私は人妻だ。夫以外の男性の誘いに、簡単に乗るべきではない。

 (けど、一杯飲むぐらいならいいんじゃないの?)

 頭の中でそうささやく自分もいる。
 私が他の男性とお酒を飲んだって、稔くんは気にも留めないかもしれないじゃないかと。

 ──でも、私は結婚している。それは嘘のない事実だ。
 たとえ稔くんが、私にさほど興味を感じていないのだとしても。
 私は、彼の妻になる契約を交わしているのだから。
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