夢見るだけじゃ終われない 〜恋と令嬢とカクテルと〜
どうして今日に限って臣海がいるんだろう。やりにくいことこの上ない。
いや、べつに彼女を口説いてるわけではないけれど。
こちらの気持ちもつゆ知らず、目の前の彼女はかなりのハイピッチでワイングラスの中身を飲み干している。
すでに顔が真っ赤だ。お酒に詳しくないとは言っていたが、そのうえかなり弱いんじゃないか?
「乙羽さん……ふふっ、顔と一緒で綺麗な名前」
彼女の口調が砕けてきた。やはりすでに酔っている。
――『ふふっ』って、可愛いな……
「……乙羽悠。悠と呼んでください」
思わずそんなことを口走っていた。
誰だ、『仕事中にそんなことしないよ』なんて言っていた奴は。
けれど彼女に『悠』と名前を呼ばれた途端、身体の奥から甘く痺れてきて、そんなのどうでもよくなった。
もうとっくにグダグダだ。