竜王太子の生贄花嫁を拝命しましたが、殿下がなぜか溺愛モードです!?~一年後に離縁って言ったじゃないですか!~
 エルナは竜人に関しての知識をそこまで詳しく知らなかった。だから勝手に、自分の中で竜王というものへの妄想を膨らませてしまっていた。
「殿下のところへ行くまでに、エルナ様に竜人についてお教えしましょうか」
 フランツはくすくす笑いながら、エルナに竜人とはどんなものかを話し始める。
「竜人というのは今では伝説と呼ばれる古代の生物、竜が人型へ進化した姿です。見た目は普通の人間と変わりませんが、人間が持っていない優れた身体能力や魔法を使えるものも多いですね」
 ふむふむと相槌を打ちながら、エルナはフランツの話に聞き入った。
「竜王族ともなれば、自然の力すら操れます。天候を変えたり、嵐を起こしたり。……この能力が、人間たちから恐れられる理由でもありますが」
 フランツは苦笑する。
話を聞いて、エルナは竜人は人間と見た目は同じでも性質はまったく異なるのだということがよくわかった。そして、自分の夫となる相手がどれだけすごい能力の持ち主かも。
「歩きながらの説明になってすみません。我々やルードヴィヒ様のことが、うまく伝わっていればよいのですが」
「はい。みなさんがどれだけ偉大な種族なのかってことがよくわかりました」
「それはよかった。しかし、あなたもまた素晴らしい能力をお持ちの女性ではありませんか。その聖なる力を我が国のために使っていただけるなんて光栄ですよ」
 この力を目的に国へ招き入れているのだから、このように最初だけ褒めてくれているのだろうか――そう思いつつも、エルナは目の前で微笑むフランツが、普通に親切でいい人に思えてきた。実家の屋敷に住まう家族よりもよっぽど。
 王宮の中に入ると、あまりの綺麗さにエルナは瞳を輝かせる。白と銀と青を基調とされた王宮内は、壁や天井を眺めているだけで清廉な心になれそうだ。それくらい美しかった。こんな場所に今日から住むのかと思うと、生贄として呼ばれたにも関わらず胸が弾んでしまう。
「さあエルナ様。お待たせいたしました。こちらの部屋で王太子殿下がお待ちです」
 とある部屋の前でフランツの足がぴたりと止まり、中にルードヴィヒがいることを告げられる。いよいよかと、エルナは生唾を飲み込んだ。
(竜王族歴代一冷徹で無慈悲、だけども歴代一美しい見た目と呼ばれるルードヴィヒ様……どんなお方なのかしら)
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