竜王太子の生贄花嫁を拝命しましたが、殿下がなぜか溺愛モードです!?~一年後に離縁って言ったじゃないですか!~
なんとなく話が読めたエルナがそう聞くと、ルードヴィヒは僅かに口角を上げて笑った。呆れたような笑いだ。
「察しがいいな。その通り。しきたりも条約も廃止して、シェーンベルグは独立する」
「しかし、泉はどうするのですか? あの泉を聖水にできるのは、ヘンデルの加護持ちの女性だけです」
加護の力は永遠ではない。時が経てば効力はなくなっていく。だからこそ、こうして何度もヘンデルから妻をもらい続けていたのではないか。
「そんなものどうだっていい。大体、条約を結ぶ前は聖水でもなんでもなかったんだ。昔に戻るだけ。あんなものはただのプラシーボ効果であって、実際に聖水である必要などない」
普通の水よりは聖水のほうが有難いに決まっている。だが、ルードヴィヒはそんなこと気にも留めていない様子だ。聖水をもらい続けるより、独立国に戻ることのほうが最優先なのだろう。
「……ルードヴィヒ様、本気でそうお考えで?」
「ああ。お前にとっても悪くない話だろう。一年経てばヘンデルに戻れるんだぞ?」
エルナは焦る。条約を破棄されてヘンデルに戻されるなんて事態が起きれば、条約破棄の原因がエルナにあったと思われて、間違いなく怒りの矛先が自分に向くとわかったからだ。〝なぜうまくやらなかったのか〟と、ヘンデルの上流階級者たちに責め立てられるに違いない。現段階でも帰る場所がないというのに、そうなったらいよいよホームレスとなってしまう。シェーンベルグからもヘンデルからも追放されてしまったら、エルナはどうやって生きていけばいいものか。
「だから、お前とは一年後に離縁する」
はっきりとした口調で、ルードヴィヒはエルナに告げた。エルナは、なぜ彼がここまでヘンデルとの関わりを拒むのかがわからなかった。
「ルードヴィヒ様は、ヘンデルの人間がお嫌いなのですか?」
思いついた理由といえば、それくらいだ。
ルードヴィヒはゆっくりと立ち上がり、今日妻となったばかりのエルナを見つめた。最初に対面した時より衣装も化粧も地味ではあるが、それでもじゅうぶんエルナの顔は整っており、誰が見ても美女といえる。
「……俺は、美しいものが嫌いだ」
言った瞬間、窓から風が吹き込んだ。ルードヴィヒのほどかれた長い髪がサァッと揺れるのが、月明かりのおかげでよく見える。その姿はあまりに美しく、エルナは言葉も出なかった。
「察しがいいな。その通り。しきたりも条約も廃止して、シェーンベルグは独立する」
「しかし、泉はどうするのですか? あの泉を聖水にできるのは、ヘンデルの加護持ちの女性だけです」
加護の力は永遠ではない。時が経てば効力はなくなっていく。だからこそ、こうして何度もヘンデルから妻をもらい続けていたのではないか。
「そんなものどうだっていい。大体、条約を結ぶ前は聖水でもなんでもなかったんだ。昔に戻るだけ。あんなものはただのプラシーボ効果であって、実際に聖水である必要などない」
普通の水よりは聖水のほうが有難いに決まっている。だが、ルードヴィヒはそんなこと気にも留めていない様子だ。聖水をもらい続けるより、独立国に戻ることのほうが最優先なのだろう。
「……ルードヴィヒ様、本気でそうお考えで?」
「ああ。お前にとっても悪くない話だろう。一年経てばヘンデルに戻れるんだぞ?」
エルナは焦る。条約を破棄されてヘンデルに戻されるなんて事態が起きれば、条約破棄の原因がエルナにあったと思われて、間違いなく怒りの矛先が自分に向くとわかったからだ。〝なぜうまくやらなかったのか〟と、ヘンデルの上流階級者たちに責め立てられるに違いない。現段階でも帰る場所がないというのに、そうなったらいよいよホームレスとなってしまう。シェーンベルグからもヘンデルからも追放されてしまったら、エルナはどうやって生きていけばいいものか。
「だから、お前とは一年後に離縁する」
はっきりとした口調で、ルードヴィヒはエルナに告げた。エルナは、なぜ彼がここまでヘンデルとの関わりを拒むのかがわからなかった。
「ルードヴィヒ様は、ヘンデルの人間がお嫌いなのですか?」
思いついた理由といえば、それくらいだ。
ルードヴィヒはゆっくりと立ち上がり、今日妻となったばかりのエルナを見つめた。最初に対面した時より衣装も化粧も地味ではあるが、それでもじゅうぶんエルナの顔は整っており、誰が見ても美女といえる。
「……俺は、美しいものが嫌いだ」
言った瞬間、窓から風が吹き込んだ。ルードヴィヒのほどかれた長い髪がサァッと揺れるのが、月明かりのおかげでよく見える。その姿はあまりに美しく、エルナは言葉も出なかった。