竜王太子の生贄花嫁を拝命しましたが、殿下がなぜか溺愛モードです!?~一年後に離縁って言ったじゃないですか!~
「おはようございますエルナ様。紅茶をご用意しておりますので、よろしければどうぞ」
「……おはようございます。いただきます」
 寝起きでぼんやりしつつも、エルナは侍女が淹れてくれた紅茶に手を伸ばした。茶葉の香りと口に広がるほんのりとした甘さと温かさに、エルナはほっと一息つく。次第に眠気も覚めて行った。
「朝の準備が終わり次第、フランツ様がお話があるとのことです」
 侍女はエルナの髪を梳かし、身支度を整えながら言う。
 フランツは昨日『これからの生活についての説明は、また明日以降にさせていただきます』と言っていた。話があるとすればこのことだろう。
 朝食も終えたところで、エルナは侍女に連れられてフランツのいる応接室へ向かった。足音を聞いてエルナが来たことを察したのか、ノックをする前にフランツが扉を開けて、エルナを迎え入れてくれた。
 空いている椅子に座るよう言われ、エルナは黙って腰掛ける。フランツはふたりぶんのお茶を両手に持って、エルナと向かい合うように座った。
「昨夜はいかがでしたか?」
 お茶をエルナに手渡して、フランツはにこりと笑ってそう言った。
(昨夜って――ルードヴィヒ様との初夜のことよね?)
 会って早々初夜のことを聞くなんて、見た目によらずデリカシーに欠けている。だが、エルナは嫌な顔ひとつ見せずに答える。
「……得になにもありませんでしたが」
 実際、聞かれて恥ずかしくなるようなことややましいことはひとつもなかった。
「……でしょうね」
 フランツはなにもなかったであろうことを察していた様子だ。予想通りと言わんばかりに大きく頷いて、フランツは熱めのお茶を一気に飲み干してカップを置いた。
「まったくあのお方は……建前上だけでも、やることはやれと言っているのに」
 そして、ルードヴィヒに対する不満をブツブツとぼやき始める。
「フランツさんは、ルードヴィヒ様とはいつからの仲なのですか?」
「ほぼ生まれたときからです。私は人生のほとんどをルードヴィヒ様にお仕えしてきたので、彼のことはなんでも知っているつもりです」
『だけどまさか、本当に初夜になにもしないなんて』と、フランツは頭を抱えていた。
「私に魅力がなかっただけです。すみません」
 エルナが謝ると、すかさずフランツが口を挟んだ。
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