竜王太子の生贄花嫁を拝命しましたが、殿下がなぜか溺愛モードです!?~一年後に離縁って言ったじゃないですか!~
ルードヴィヒは、あまりに流暢に作業をこなすエルナを実際に見て、前情報はあったものの驚いていた。
お茶の入ったティーカップやポットを最低限音を立てずにテーブルに置くなんて、普通の令嬢ならできない。ルードヴィヒの目線はいつのまにか、書類からエルナの非の打ち所がない所作へと変わっていた。
「完了いたしましたので、失礼いたします」
「あ、ああ……」
一礼すると、エルナはワゴンを引いて執務室から出ていった。ルードヴィヒにとってはまるで一瞬で嵐が過ぎ去ったかのような衝撃だ。
――フランツの言っていたことは本当だったんだな。
ルードヴィヒは書類を置くと、湯気を放っているティーカップに手を伸ばした。甘い香りが鼻を掠める。疲れている体を癒してくれるような、優しい香りだ。
ひとくち飲むと、香りと同じように優しい味が広がった。甘すぎず苦すぎず、絶妙なバランスだ。備え付けのチョコレートには酸味もあって、紅茶とお菓子だけでいつもの何倍も満足度を得ることができた。
「ルーイ様、よろしいですか?」
エルナが執務室を去ってから五分後くらいだろうか。ほっと一息ついているところへ、今度はフランツが執務室を訪ねてきた。
「入れ」
「失礼します――おや。さっそくお召し上がりのようで」
お茶とお菓子を食べるルードヴィヒを見て、フランツは上機嫌だ。
「どうですか? 本日のラインナップは」
「ああ。今まででいちばんいい。この茶葉は新しく仕入れたのか? どこのものか教えてくれ。もっとたくさん補充しておこう」
普段、ルードヴィヒのお茶やお菓子を用意しているのはフランツだ。そのため、今日も当たり前にそうだと思っていた。エルナは運んできただけで、淹れたのはフランツだろうと。
「さあ。私もこんな甘い香りの紅茶は知りません。ヘンデルの茶葉でしょうか。このあと、エルナ様に聞いてみますね」
「……なにを言ってるんだ?」
「本日のお茶とお菓子は、エルナ様がルーイ様のためにご用意されたものですよ。満足いただけたようでなによりです。言ったでしょう? 〝彼女の淹れるお茶は私のより美味しい〟と」
たしかに言っていた。言っていたが、昨日の今日で、こんなに早く仕掛けてくるとはルードヴィヒも思っていなかった。
「いやぁ。今回の生贄は使える令嬢でよかったですね。これは、一年後に離縁するのはもったいないのでは?」
お茶の入ったティーカップやポットを最低限音を立てずにテーブルに置くなんて、普通の令嬢ならできない。ルードヴィヒの目線はいつのまにか、書類からエルナの非の打ち所がない所作へと変わっていた。
「完了いたしましたので、失礼いたします」
「あ、ああ……」
一礼すると、エルナはワゴンを引いて執務室から出ていった。ルードヴィヒにとってはまるで一瞬で嵐が過ぎ去ったかのような衝撃だ。
――フランツの言っていたことは本当だったんだな。
ルードヴィヒは書類を置くと、湯気を放っているティーカップに手を伸ばした。甘い香りが鼻を掠める。疲れている体を癒してくれるような、優しい香りだ。
ひとくち飲むと、香りと同じように優しい味が広がった。甘すぎず苦すぎず、絶妙なバランスだ。備え付けのチョコレートには酸味もあって、紅茶とお菓子だけでいつもの何倍も満足度を得ることができた。
「ルーイ様、よろしいですか?」
エルナが執務室を去ってから五分後くらいだろうか。ほっと一息ついているところへ、今度はフランツが執務室を訪ねてきた。
「入れ」
「失礼します――おや。さっそくお召し上がりのようで」
お茶とお菓子を食べるルードヴィヒを見て、フランツは上機嫌だ。
「どうですか? 本日のラインナップは」
「ああ。今まででいちばんいい。この茶葉は新しく仕入れたのか? どこのものか教えてくれ。もっとたくさん補充しておこう」
普段、ルードヴィヒのお茶やお菓子を用意しているのはフランツだ。そのため、今日も当たり前にそうだと思っていた。エルナは運んできただけで、淹れたのはフランツだろうと。
「さあ。私もこんな甘い香りの紅茶は知りません。ヘンデルの茶葉でしょうか。このあと、エルナ様に聞いてみますね」
「……なにを言ってるんだ?」
「本日のお茶とお菓子は、エルナ様がルーイ様のためにご用意されたものですよ。満足いただけたようでなによりです。言ったでしょう? 〝彼女の淹れるお茶は私のより美味しい〟と」
たしかに言っていた。言っていたが、昨日の今日で、こんなに早く仕掛けてくるとはルードヴィヒも思っていなかった。
「いやぁ。今回の生贄は使える令嬢でよかったですね。これは、一年後に離縁するのはもったいないのでは?」