竜王太子の生贄花嫁を拝命しましたが、殿下がなぜか溺愛モードです!?~一年後に離縁って言ったじゃないですか!~
 背後からカツカツと靴が鳴る音が聞こえ、エルナは振り向く。すると、準備を終えたルードヴィヒが姿を現した。
 青と銀を基調にした軍服風の衣装は、エルナに用意された水色のドレスと相性ばっちりだ。今は照明を落としているため辺りは薄暗いが、それでも今日のルードヴィヒはいつもの数段かっこいいということは、ひと目見ただけでわかる。
「あの、ルードヴィヒ様、本日はよろしくお願いいたします」
 どもり気味に、エルナはルードヴィヒに挨拶をした。
 来賓の前でどう振る舞えばいいかは事前にフランツに聞いていたが、仮にも自分が主役のパーティーなど初めてのことだ。ルードヴィヒと隣に並ぶことで、エルナの緊張はピークに達していた。
「……お前は俺の横で適当に笑っているだけでいい」
「は、はい。わかりました」
 フランツに教わったのと同じことを、再度ルードヴィヒにも言われた。
【皆様お待たせしました! このたびルードヴィヒ・シェーンベルグ殿下の妃となった、エルナ・アーレント様のご入場です!】
「時間だ。行くぞ」
 フランツのアナウンスと同時に、スポットライトオが照らされる。ルードヴィヒはふんっと鼻を鳴らして、エルナの手を取ると階段を慣れた足取りで歩き始めた。ルードヴィヒのエスコートを受けて、エルナは苦手な高いヒールで一歩ずつ足を進める。
 大広間に集まった来賓たちの歓声と拍手に包まれながら、エルナはなんとか笑顔で階段をすべて降り切った。
「このたびは、我が妻、エルナ・アーレントのお披露目会にお越しいただき、ありがとうございます。今宵のパーティー、どうぞ心行くまでお楽しみください」
 フランツが用意した定型文をルードヴィヒが言い終えると、エルナはルードヴィヒと一緒に一礼する。エルナのお披露目会だが、エルナがなにかを話す場面は用意されていない。これはあくまでも、〝今回も加護持ちの令嬢をヘンデルからもらった〟という事実を国民に知らせるための会なのだ。その流れで明日、エルナは泉に聖魔法をかける儀式を行うことになっている。
 ルードヴィヒに連れられるがまま、エルナは国の上流階級であろう竜人たちに挨拶周りをした。何人も連続でなめるような視線を向けられて、正直あまりいい気分はしなかったが、これが自らの立場なのだと受け入れて、エルナは上辺だけの笑顔を浮かべ続けた。
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