竜王太子の生贄花嫁を拝命しましたが、殿下がなぜか溺愛モードです!?~一年後に離縁って言ったじゃないですか!~
 次はデザートでも食べようかと思い移動すると、やはり視線を感じて立ち止まる。いや、実は食事をしているときもずっと、その視線はエルナにまとわりついて離れなかった。
(またあのご令嬢がこっちを見てる……)
 赤髪の令嬢は、先ほどより距離を詰めてエルナを変わらずじぃっと見つめていた。
「ひとりでなにをしているのですか。エルナ様」
「フランツさん!」
 そこへ、接待がひと段落ついたフランツがやって来た。フランツは白ワインが注がれたグラスを両手に持ち、ひとつをエルナに渡す。エルナと乾杯するために、ふたりぶんもらってきたのだろう。
「ありがとうございます」
「いえ。こんな日は飲まなきゃやってられませんから」
 フランツはぐびっと白ワインを一気飲みする。グラスはあっという間に空になった。
「あの、フランツさんに聞きたいことがあるんですが」
「私に? そのワインをいただけるなら答えてさしあげましょう」
 じゃあ最初から渡さなければよいものを。エルナは一度も口をつけていないグラスをフランツに渡した。気持ちいいスピードで、フランツは二杯目を飲み干した。
「で、聞きたいことというのは? ルーイ様の居場所なら私も知らないので却下ですよ」
(ルーイ? ああ、ルードヴィヒ様のことね。フランツさん、普段はそう呼んでるんだ)
 普段はエルナの前で〝ルードヴィヒ様〟と呼ぶフランツが愛称で呼んでいる。お酒が回って来て、少々気が緩んでいるのかもしれない。
「違います。あの……あちらにいる赤髪のご令嬢のことなんですが」
 エルナはフランツの耳に顔を寄せて、小声でまとわりつく視線の主について尋ねた。
「ああ。彼女はリーチェル侯爵家のレーネ嬢です。年齢はエルナ様よりふたつ下の十八歳」
 フランツは彼女のことを知っているようだ。侯爵家というと身分も高い。
「レーネ嬢がどうかしましたか?」
「いや、さっきからずっと視線を感じてまして……」
「……なるほど」
 レーネがエルナに視線を送り続ける理由に、フランツはなにか思い当たる節があるようだ。
「彼女はルーイ様の熱狂的なファンですからね。親衛隊を作って、そのリーダーを務めていたほどですから」
「し、親衛隊?」
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