竜王太子の生贄花嫁を拝命しましたが、殿下がなぜか溺愛モードです!?~一年後に離縁って言ったじゃないですか!~
 やっと一息つけたところで、エルナのところへ三人の令嬢がやって来た。みんな派手に着飾っており、身に着けているドレスや装飾品を見るだけで、身分の高い令嬢だということがわかる。
「あ……皆様、本日はお披露目会に来ていただき、ありがとうございます」
 せっかく休めると思ったのにタイミングが悪い。
エルナはドレスの裾をつまむと、ふわりと広げて令嬢たちに挨拶をする。
「ふーん。今回はずいぶんとまた、綺麗な奴隷妻をヘンデルから連れてきたのねぇ」
「容姿だけはルードヴィヒ様と釣り合うかもしれないけど……明日の儀式が終われば、あなたなんてただの奴隷よ」
「せいぜい、今日だけでも王太子妃気分を味わってちょうだい」
 ひとりずつエルナに罵声を浴びせると、最後は三人揃って高笑いをテラスに響かせた。大広間ではほかの人の目があるため、彼女たちも大人しくしていたのだろう。
 エルナはなにも言い返すことができなかった。ここへ来たときから、自分がシェーンベルグでどう扱われるかはわかっていた。しかし、実際今日までの一週間、思ったよりひどい人は周りにいなかった。
 使用人の仕事はうまくこなせていたし、指導係のフランツも、毒舌ではあるが仕事ができるエルナにはそこそこ優しかった。――ルードヴィヒの噂に聞いた恐ろしさも、今のところまだそんなに感じていない。
 ここへ来て初めて悪意しかない言葉を浴びせられ、エルナは目が覚める。本当はこれが普通なのだと。これからずっと、こういった罵声を浴びせられ続けるのだと。竜人たちにとって、エルナは生贄なのだから。
(私って、どこへ行ってもこうなる運命なのか)
 心ない言葉には慣れている。エルナはやまない高笑いを聞きながら自嘲した。
「ちょっとあなたたち! そこでなにしているの!?」
 すると、三人の令嬢たちのさらに向こう側から、誰かの声が聞こえた。
「レ、レーネ様っ!」
 令嬢たちは突然現れたレーネを見て、焦った顔を浮かべている。
(レーネって――あ)
 思った通り、自分に熱視線を送り続けていた令嬢がそこにいる。三人がレーネに動揺しているのを見ると、レーネのほうが階級が上の令嬢なのだろう。
 レーネは三人のあいだに割って入ると、エルナを庇うようにエルナの前に立ち塞がった。そして、キッと睨みをきかせて口を開く。
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