竜王太子の生贄花嫁を拝命しましたが、殿下がなぜか溺愛モードです!?~一年後に離縁って言ったじゃないですか!~
 そんな考えがエルナの頭をよぎった。レーネはルードヴィヒに憧れいる。故に、妻であるエルナを守ろうとしたのではないかと。そうすることで、ルードヴィヒからの評価を得ようとしたのではないか。
 ――だが、エルナの予想は一瞬にして外れることとなる。
「わたくし、エルナ様と仲良くなりたいと思ったのです!」
「……私と?」
 エルナの眉間にしわが寄った。レーネの思惑が、エルナにはさっぱり読めない。
「はい。わたくし、あなたほど美しい女性は生まれて初めて見ました! ルードヴィヒ様と一緒に階段を下りてくる姿を拝見して、一瞬にして心を奪われましたの!」
 レーネは興奮気味に、前のめりになってエルナに思いのたけをぶつける。
(それで、私のことをずっと見ていたの?)
エルナは呆気に取られ、口をぽかんと開いたままだ。
「わたくし、美しいものと甘いものがだーい好きなのですわっ!」
 だから、シェーンベルグ一の美男子と言われるルードヴィヒにも一目惚れしたのだとレーネは言った。
「……本当に、そんな理由で私と?」
 エルナはにわかに信じがたく、レーネに再確認する。
「そんな理由とはなんですか。立派な理由じゃありませんこと! 竜人は美しいものが好きな種族なのですから」
 ここでやっと、エルナはフランツの言っていた〝竜人は面食いだ〟という話が本当だったとを知る。
「それに、エルナ様は知らないかもしれませんが、竜人の女性でエルナ様のように美しく生まれることは絶対に不可能ですのよ」
「どうして?」
「わたくしたちの先祖――雌の竜は、身体が大きく逞しかったと言われておりますの。その名残で、竜人の女性は男性的な見た目をしているものが多い。背が大きいとか、ガタイがいいとか、ですわね。ほら、わたくしも背はエルナ様より小さいけれど、肩幅がものすごく広いでしょう? 本当、嫌になりますわ」
 言われてみれば。失礼にあたるかもしれないが、レーネはよく見ると逞しい体つきをしていた。先ほどまでここにいた三人組も、全員背が高かったり、筋肉があったりと、男性的な要素があったように思う。
「だから、エルナ様のような美しい女性にわたくしはすっごく憧れますの! ……まぁ、ほとんどの竜人は、ヘンデルの女性の美しさへの嫉妬が勝つんでしょうけど。お生憎様、わたくしはそんな醜い感情を持ち合わせておりませんのよ」
< 38 / 54 >

この作品をシェア

pagetop