竜王太子の生贄花嫁を拝命しましたが、殿下がなぜか溺愛モードです!?~一年後に離縁って言ったじゃないですか!~
おもにレーネの話をエルナが一方的に聞くばかりだったが、エルナはそれでも、この時間をとても楽しく思えたのだった。

 午後二十二時を回ったころ、夕刻から続いた王太子妃お披露目会はついにお開きとなった。放っておけばこのまま朝まで続きそうな雰囲気だったが、この日はシェーンベルグに嵐が近づいているという予報があったため、最長でも二十二時までと最初から決まっていたらしい。
 エルナは屋敷へ帰っていくレーネを見送ると、歩いて王宮へと戻った。
(そういえば、国王様と王妃様に会ってない。……都合が悪かったのかしら)
 今日のパーティーで、最後までルードヴィヒの両親に挨拶をすることはなかった。今さらながらに、エルナはそのことを思い出した。
 玄関口までたどり着いたところで、急に暗かった空がピカッと光る。その後、遠くで落雷の音が聞こえた。風も強まっており、エルナは本格的に嵐が襲ってきたのを察して王宮内へ駆け込んだ。
 ドレスとヒールを脱ぎたかったエルナは、まずは自室へ帰ることにした。動きやすい服に着替えてから、パーティーの後片付けを手伝おうと思ったのだ。しかし、いざ片付けに参加すると、侍女たちが慌てて止めにかかった。
「エルナ様、今日はゆっくりお休みになってください!」
「たくさん挨拶をしてお疲れになったでしょう。それに、明日は泉での儀式があります。そのために体力を温存しておいてください」
 手に持っていた箒を侍女に没収され、エルナは大広間から出るように言われた。今日は言われた通り、寝る以外することがなくなってしまった。朝から準備で忙しかったこともあり、眠っていいと言われると一気に睡魔が襲ってきた。
(今日はもう寝よう。その前に、ルードヴィヒ様に挨拶だけでもしておかないと……)
 自由時間以降、エルナは一度もルードヴィヒに会っていなかった。今日はルードヴィヒに散々お世話になったため、一言でもいいからお礼を言いたいとエルナは思った。
 だが、王宮内の思い当たる場所どこを探してもルードヴィヒが見つからない。どうしようかと思っていると、エルナの前を偶然フランツが通りかかった。
「フランツさん! お疲れ様です!」
「ああ、エルナ様。本日はお疲れ様でした。明日の儀式ではよろしくお願いいたしますね」
 お酒もすっかり抜けているようで、フランツは若干疲労感のある顔でエルナに笑いかける。
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