竜王太子の生贄花嫁を拝命しましたが、殿下がなぜか溺愛モードです!?~一年後に離縁って言ったじゃないですか!~
「はい。こちらこそ。……あの、ルードヴィヒ様がどこにいらっしゃるかご存じないでしょうか?」
 エルナが聞くと、ルードヴィヒの眉毛がぴくりと動いた。
「……さあ? もうお休みになられたのでは?」
 少々ぎこちない感じで、フランツは答えた。
「そうですか。寝室にはさっき行ってみたんですけど……寝ているなら仕方ないですね。明日にします」
「なにか用事があったのですか?」
「はい。今日のお礼を言いたくて」
「ああ。そんなこと、明日伝えればいいですよ。さ、エルナ様も今日はさっさと寝てください」
 フランツに部屋に戻るよう急かされ、エルナは仕方なく自室で寝ることにした――が、いざベッドに入ると睡魔はどこかへ飛んでいき、なぜかなかなか寝付けなかった。
 目を閉じたり開けたりしているうちに、時計は夜の十二時を超えていた。片付けも終わったのか、数時間前までガヤガヤと賑わっていた大広間からも、もう物音ひとつ聞こえない。
 カチカチと時計の針が動く音のみが響く部屋の中で、エルナは眠りにつくため、ぎゅっと目を固く閉じた。すると、なにか妙な音が聞こえる。音というより、なにかが呻いているような声だ。
(……この不気味な声はなに!?)
 耳を澄ますと微かに聞こえる程度の本当に小さな声だったが、一度意識するとどんどん鮮明に聞こえてくる。エルナはよけいに目が覚めてしまい、この不気味な声の正体が気になってしょうがなくなった。
(普段、こんな声が聞こえたことはない。もしかして――侵入者?)
 エルナは、お披露目会に紛れて何者かが王宮に侵入したのではないかと考えた。もしそうだったら、王宮にいる竜人たちに危険が及ぶかもしれない。むしろ、何者かを確認しないと怖くて眠りになどつけない。エルナはいてもたってもいられなくなり、ランタンを片手に部屋を出た。
 暗く静まり返った王宮を、足音を立てないよう慎重に歩く。
 廊下に出て一階へ降りると、呻き声が先ほどよりも近くなった気がした。
(……警備はなにをしてるのかしら)
 不気味な声をなぜ放置しているのか。エルナは疑問に思い眉をひそめる。
 耳をすまして、呻き声が聞こえる方向を辿っていくと、地下へ降りる扉に到着した。
この一週間、王宮のあらゆる場所を掃除したが、地下にだけは入ったことがない。フランツから「ここには近づくな」と言われていたためだ。
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