竜王太子の生贄花嫁を拝命しましたが、殿下がなぜか溺愛モードです!?~一年後に離縁って言ったじゃないですか!~
エルナ竜に話しかけた。この竜と、おしゃべりしたいと思ったのだ。生まれて初めて見る伝説の生き物に、エルナは少々興奮していた。
「私はエルナっていうの。あなたは?」
「……」
 フーッフーッと呼吸を繰り返す音は聞こえるが、竜はなにも答えようとしない・
「竜を見るなんて初めて……もう少し、近寄ってもいいかしら?」
 返事がないので、エルナは勝手に竜との距離を縮めて行った。より近くで竜を見ると、エルナはとある人物を思い出した。
「ねぇ、あなた、ルードヴィヒ様に似てるわ。その瞳の色や纏うオーラが……」
 気高いオーラに、シルバーの三白眼の瞳。エルナに指摘され、竜の尻尾がわずかに反応する。しかし、角度的にエルナがその動きに気づくことはない。
 エルナは誘われるように、そっと竜の大きな顔に手を伸ばした。竜は避けることなく、じっとエルナを見つめている。エルナは頬に優しく触れると、目を細めて竜に笑いかけた。
「あなたはルードヴィヒ様と同じで、すごく強そうで――とても美しいわ」
 そう言われ、エルナと逆に竜は目を大きく見開いた。その表情は、驚いているようにも見える。
 触れる行為を抵抗されなかったことに気分をよくしたのか、エルナは瞳をキラキラと輝かせ、さらに竜へと顔を近づけた。
「私、あなたと仲良くなりたいわ。今日ひとり奇跡的にお友達ができたんだけど……ほかは誰もいないの。今後もきっと、誰も私と友達にはならない。だから、私と友達になってくれない?」
 笑いながらエルナはひとり、言葉を一切発さない竜に話しかけ続けた。
「竜のお友達なんて、とっても素敵だもの! いいでしょう?」
 シェーンベルグへ来て、エルナは初めて素の自分をさらけ出せていた。相手が人間でも竜人でもない、別の生態系といえる竜だからこそ、心にバリアを張ることなく接することができたのかもしれない。
 エルナの問いかけに、竜は大きく鼻息を鳴らした。それがなにを意味するのかわからないが、エルナはポジティブに捉えることにした。今のは〝友達になってくれる〟という返事だと。
 エルナは竜に寄り添うように座り込むと、他愛もない話を始めた。コルセットやヒールがたいへんだったことやレーネとの出会い。フランツがお酒好きで驚いた話も。竜に話が伝わっているのかわからないが、ところどころ、目を開けたり細めたりという反応を見せてくれた。
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