竜王太子の生贄花嫁を拝命しましたが、殿下がなぜか溺愛モードです!?~一年後に離縁って言ったじゃないですか!~
「ありがとう。レーネが声をかけてくれたおかげで緊張がほぐれたの。助かったわ」
「そんなそんな! はぁ。エルナお姉様のお役に立てるなんて光栄……。本日も美しい夫婦を眺められたおかげで、帰ってからのスイーツをとびきり美味しく食べられそうですわ」
 うっとりした顔で、レーネは言う。
「できればルードヴィヒ様とエルナお姉様がふたり並んでいるところを見たかったけれど……ルードヴィヒ様ったら、もうお帰りになられたのですか?」
「えっ!」
 レーネに言われ、エルナは既にルードヴィヒの姿がないことに気づく。儀式が終わってまだ数分しか経っていないというのに、いくらなんでも帰るのが早すぎだ。
「本当に、ルードヴィヒ様はせっかちなんですから」
 頬をぷくっと膨らませて、レーネは不満げにそう言った。
「エルナ様」
 レーネと会話しているところへ、フランツがやってくる。
「ルードヴィヒ様は仕事があるので先にお戻りになられました。さぁ、我々も王宮へと帰りましょう。帰りは私と同じ馬車になりますが、よろしいですか?」
「フランツさん。はい、もちろん」
 また時間のかかる人力車だったら疲れそうだなと思っていたので、エルナは馬車と聞いてほっとする。
「えっ? フランツ様が直々に馬車を? ……エルナお姉様に?」
 ふたりのやり取りを聞いていたレーネが、怪訝そうに顔をしかめる。
「……はい。なにか問題でも? レーネ嬢」
「問題っていうか、わたくしが聞いていた話と違うなって。加護持ちの王太子妃は、儀式が終わったその瞬間から放置されたりすることも多かったと聞いたわ。お迎えの馬車を出してもらえるのは、王太子が本当に妃を気に入っているときだけ――」
「レーネ嬢。そんなくだらない噂話、鵜呑みにしてはいけませんよ。わかりましたか?」
 フランツは話している途中のレーネに、圧をかけるように言う。レーネはフランツの笑顔の裏に潜んだその圧力に気づき、大人しく口を閉じた。
「わ、わかりましたわ。それじゃあ嵐も来るようですので、わたくしは失礼いたします」
 焦ったレーネは、フランツから逃げるように用意されたリーチェル家の馬車に乗り込んだ。レーネだけが乗るにはサイズの大きな馬車を見て、フランツは言う。
「ああ。エルナ様を乗せて帰ろうとしていたのですね。……エルナ様、いつのまに彼女の心をあんなに射止めたのですか?」
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