竜王太子の生贄花嫁を拝命しましたが、殿下がなぜか溺愛モードです!?~一年後に離縁って言ったじゃないですか!~
「うーん。私もよくわかりませんけど、レーネはとってもかわいくていい子ですね」
 帰っていくレーネを微笑ましく見つめるエルナ。そんなエルナを見て、フランツは小さな声でぼそっと呟く。
「……ルードヴィヒ様も、いったいなにを考えているのか」
「はい? なにか言いましたか?」
「いえ。こっちの話です。行きましょう。ぼーっとしてると嵐がやってきますよ」
 スタスタと歩き出すフランツの背中を、エルナは追いかけた。そのままふたりで馬車に乗り込み、エルナは王宮への帰路についた。

 予報通り、十五時になると天気は大荒れ状態だ。暴風が吹き、大雨に振られ、時折雷が音を立ててどこかに落ちる。
 降りしきる雨を窓越しに見つめながら、エルナはぼーっとしていた。
(儀式が終わったから早速こき使われるのかと思ったら……なんだか拍子抜けだわ)
 エルナは王宮に戻るなり、フランツに〝今日からなにをしたらいいか〟と尋ねた。フランツは、エルナの質問の意図を瞬時に理解した。きっと、過酷な奴隷生活が本格的に始まると思っているのだと。
しかし、フランツの答えはあっけないものだった。
『それを決めるのはルードヴィヒ様なので、とにかく指示があるまでは好きにしていてください』
 今まではフランツがやることを指示していたが、今後はその役目がルードヴィヒになるようだ。エルナは指示待ちの状態になり、やることがなくなった。エルナの苦手な自由時間がまた始まってしまったのだ。
(今は嵐の前の静けさ……って感じで、なにも言ってこないのかな……って、外は大嵐なんだけど)
 心の中でつっこみを入れて、エルナはひとりで自嘲する。
(ルードヴィヒ様の妻になったら一生ひどい目に遭うってあれだけ噂されていたし……なにもなく終わることなんてないわよね。それに、これからは条約破棄を止めるために、いろいろ頭を働かせないと……)
 儀式は終わったが、やることはもりだくさんだ。
 いろいろ作戦を練らねばならないのにと思いながらも、自分がこの先どうなるか、未来がまったくわからない。
「失礼いたします。エルナ様、お届け物でございます」
エルナが深いため息をついていると、侍女が部屋まで手紙を持ってきた。その手紙を扉からいちばん近いテーブルに置くと、侍女はさっさと部屋を出ていった。
 立ち上がり、手紙を手に取る。
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