竜王太子の生贄花嫁を拝命しましたが、殿下がなぜか溺愛モードです!?~一年後に離縁って言ったじゃないですか!~
 なぜか頭上からルードヴィヒの声が聞こえて、エルナは顔を上げた。そこには、上半身を露にしたルードヴィヒの姿があった。
「えっ!? えぇぇっ!?」
 ――どういうこと!? エルナは口をぱくぱくさせながら、壁のいちばん端っこまで後ずさりした。
「……クッ」
 期待通りのリアクションをするエルナを見て、ルードヴィヒは笑い声を漏らした。
「なにをそんなに驚いている?」
「な、なにをって」
 ルードヴィヒは怪しげな笑みを浮かべて、エルナに歩み寄ってくる。逃げようにも、後ろが壁でどうにもならない。
「どうしてルードヴィヒ様が私の部屋にいるんですか!」
 これ以上鮮明にルードヴィヒの上裸姿を直視するのは無理だと思い、エルナは目と閉じて叫んだ。
「ここはお前の部屋じゃないが? 周りをよく見渡してみろ」
「……えっ」
 エルナは恐る恐る目を開けると、なるべくルードヴィヒを視界にいれないように周りを見渡した。
(私の寝室でも、ルードヴィヒ様の寝室でもない――ここは、いつも竜とおしゃべりしている地下室だ。……そうか。私、話しながら寝ちゃったんだわ。でも――)
 だとしても、なぜルードヴィヒがここにいるのか。更に、地下室から竜の姿が消えていた。 
 このことから、エルナはある可能性を見出す。しかしそれは、エルナからすると勘違いであってほしいと願わずにはいられない可能性だった。
(まさか、私が今まで一緒にいた竜って――)
「黙り込んでどうした? この四日間、お前はずいぶんおしゃべりだったのに」
「……っ!」
 エルナはルードヴィヒのこの言葉で確信した。あの竜が――ルードヴィヒだったということを。
「ど、どうして、なんで……」
 エルナはシェーンベルグへ来た日、フランツとした会話を思い出す。
『てっきり王ともなれば、竜に似たお姿をしているのかと』
 あの日、竜人のことをなにもわかっていなかったエルナは、勝手に竜王は竜の姿をしているのだと思っていた。そのときフランツは、そんなエルナの妄想話を聞いておかしそうに笑っていた。その後、竜人について軽く説明をしてくれた。
『竜人というのは今では伝説と呼ばれる古代の生物、竜が人型へ進化した姿です。見た目は普通の人間と変わりませんが、人間が持っていない優れた身体能力や魔法を使えるものも多いですね』
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