竜王太子の生贄花嫁を拝命しましたが、殿下がなぜか溺愛モードです!?~一年後に離縁って言ったじゃないですか!~
「俺はお前もほかの女たちと同じだと思っていた。だが、お前は俺に言ってくれたな。……竜の姿の俺を〝美しい〟と」
 ルードヴィヒはそう言われたとき思ったのだ。〝エルナだけは、ほかの女と違うんじゃないか〟と。都合のいい解釈だとわかっていながら、そう思わずにはいられなかった。
「……ルードヴィヒ様?」
 ルードヴィヒが自分へ向ける眼差しが、今までとはまるで違うことにエルナは気づく。自惚れでもなんでもない。たしかにルードヴィヒは今、エルナのことを愛おしそうに見つめていた。
「俺はあのとき……すごく嬉しかった。ありがとう」
 ルードヴィヒはそのままエルナを抱きしめる。予想だにしなかった抱擁に、エルナは心臓が飛び出そうになった。竜と同じように、ルードヴィヒの身体は少しだけ冷たい。それでも、エルナを見つめる瞳には熱がこもって、決してエルナから離れようとしない。
「初めて会った日はああ言ったが、俺は――お前の美しさは、嫌いじゃない」
「っ!」
 柔らかく微笑むルードヴィヒの笑顔を見て、エルナの顔が熱くなる。
そのまましばらく、ルードヴィヒはエルナのことを抱きしめ続けた。ずっと求めていたものが手に入ったように、大事に大事に、エルナを自分の胸にしまいこんだ。

「これはどういうことなんでしょうか」
 地下室から一緒に階段を上ってきたエルナとルードヴィヒを見て、フランツは困惑していた。一体全体、なんのこっちゃわからない。
「エルナ様、あなたはなぜ地下室へ? こちらには近づくなと言ったはずですが、言いつけを守らなかったのですか?」
 エルナの仕事っぷりを誰よりも評価していたフランツは、エルナへの態度は好意的だった。だが、久しぶりに怒った雰囲気を醸し出している。
「も、申し訳ございません。四日前、呻き声がしたのが気になって……泥棒が侵入したんじゃないかと思ったんです」
「だったら先に、警備やほかの使用人に報告するのが先でしょう! この王宮で、あなたがひとりで勝手な行動をするなんて、言語道断――」
「もういいだろう。フランツ」
 感情的になって、エルナに対する言葉が厳しくなるフランツを、ルードヴィヒが一歩前に出て制止する。
「これ以上エルナを怒ってやるな。勝手な行動をしたことについては、俺がすべて許すと言っている」
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